現実は重く、カラダを伝う

By yuca - 28.8.08

広島行きは、原爆ドームと資料館を見るためだった。

いつか、行ってみたいと、
行かねばならんのではないかと
漠然と思っていた。

でも、一人で行くのは怖くて
だからって「原爆ドーム見に行こうよ。」と誰かを誘うことも出来ず
だらだらと日は過ぎた。

Cがあんまり「資料館は俺でも怖い。お前行ったら泣くで。」
と脅すので、
いや、まぁそれだけでなく、
いつかどこかで人から聞いたり読んだりとかして
それを自分の妄想で育んでしまって、
怖くて。
だから、私の中で見る覚悟がいるのは資料館のはずだった。

8/11 快晴

宮島をぐるぐる歩いて、
牡蠣やらあなご飯やらかき氷やら食べ
散々はしゃいだ後に、原爆ドームを見に行く。
宮島から平和記念公園まで船で向かう。
初めは海の綺麗さに見惚れて、
でも、次第に近付いて行くにつれ、私は緊張し、息が少し浅くなる。


今でも、本当は、どんな風に書いたらいいのか
わからない。ぜんぜんわからない。
目の前にあるものは、
とても重くて
重くて
何かがぶわっと落っこちてくるような
一気に押し寄せてくるような
そんでもってそれが
せり上がってきて
私は涙が零れるのを堪えて
崩れかけた建物の隙間から見える向こう側の光を
一生懸命に見た。
でも、これを、なんかわからんくても見て
覚えておかなきゃいけないと
体が動いて
ゆっくり周りを歩いた。


8/12 晴れ

資料館へ行く前に再び原爆ドームを見る。
鳩が何羽か其処に止まっていた。
眺めながら歩く私と原爆ドームの間に
瞬間何かが飛び込んできて
それは
笑ってピースして仲良く写真に納まっている親子だった。
気付けば其処彼処でそんなで。
なんとも言えない気持ちになって。
なんだか気持ち悪くて。
いーーーっ・・・気持ち悪い
となって。
手でぎゅっと掴まれて胸から鳩尾の辺りをかき回されているような
ぐちゃぐちゃと
そんななって。
それは誰かに対してだけじゃなくって、その後私は資料館へ行ったのだけれど、
その日朝から何も食べていなかった私とTは、
ぼーっとした頭で
お腹空いたねと言い、私はこの時も、自分の、この「お腹空いた」に、
そしてお好み焼きを「美味しい」と食べてしまえることに
気持ち悪くなって、ぐちゃぐちゃ
となった。


こないだIさんにそんな話をしたら
「C(歌い手さん)が同じことを言っていた」
と話してくれた。
彼女は、沖縄を好きなのと同じ理由で広島が好き
らしく
ツアーには必ず広島を入れるんだそう。
初め、そういうのを見てイライラして、
でも最近
これでいいんだ
って思えるようになったんだって。
前に進んで行かなければならないんだから
って。
(会話の全文ではないですが)


あんなに恐れていた資料館は、
私に知識を与えてくれる場所で
お盆のこの時期のせいもあり、
人は多くて、
説明文は全部は読めなかったし、
長く一箇所に留まってじっくり見ることも出来なかったけれど、
私はやっぱりどんな状況を説明した文章よりも
写真よりも
当時の実物のものの前で
息がくるしくなり、
鼻水がだらだらと垂れるのだった。

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